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回顧 その三

振り返ってみて艱難辛苦の多い日々だったようにも思います。やはり世襲は反対です。幼少期から嫌なことだらけでした。両親の教育も今にしても思えば大失敗だったと思います。そのために子どもたちには放任にしております。自己責任にしております。また宗門大学は基本的にはつまらなかったと思います。そもそも興味のない宗教や仏教の勉強をさせられてもやる気は出ません。授業にも聞く耳は持てません。資格取得のために永平寺に行っても意味はなかったと述懐しております。寺院子弟とは不幸なものです。これでは親子関係は悪化をします。檀信徒との関係も亀裂が入り崩壊していきます。出家とは家庭を捨てることでしかありません。世俗を離れて悟りを目指す宗教であり世間に背を向けて生きる生き方そのものです。僧侶になるとはそういうことです。出家と家業とは相反するものであり絶対的に同居をしてはならないものです。何処までいっても同床異夢でしかありません。それが今の日本仏教です。

今,私に限らず宗門の人たちはあれこれと反省していると思います。悩んでいるはずです。特に私のように夢を叶えて我が道を堂々と突き進んでいる人は稀です。私のように自己実現や自己啓発ができている人は少ないと思います。自分の思うような寺院につくり替えて自分の思うような人生をまっしぐらに生きられている成功者など宗門にはいないはずです。その私でも世襲は反対です。そもそも人物人材がいないので目標になる人がいません。仕事がつまらないと思います。修行に意義を見出せないと思います。そんな中でこれからの時代を僧侶として生きていこうなどと思う人はよっぽど無能だと思います。暇人で世捨て人だけかと思われます。生きていく糧を見出せるのでしょうか。無理かと思います。これから寺院社会は合従連衡(がっしょうれんこう)となります。吸収合併や統廃合によって嵐が吹き荒れて来ます。ほとんどの寺院では維持管理ができなくなります。檀信徒は減少の一途を辿り最後は飢え死にとなってしまいます。当院は相変わらず増加増加です。それでも収支はこの三年は横ばいです。これが現実です。寺院社会は上は大本山から下は末派寺院まですべて収支は超悪化状態です。結局はそれでもやれることがないから行く大学がないからと僧侶を目指します。そのために宗門大学があるだけです。その宗門大学のほぼすべてで経営悪化が叫ばれております。授業は崩壊しているはずです。教員も誰もやる気はないと思います。今の時代はよほどの知識人でないと僧侶になっても通用はしないし寺院運営など難しくてとても勤まりません。雑魚の集団となって葬り去れていくのが関の山です。墓じまいと人口減少、お店の閉業、空き家だらけ地区があまりにも多過ぎております。当院の周辺も御多分に洩れず荒んで来ております。さらには犬の遠吠えによって近所迷惑も甚だしい限りです。せっかく気持ちよく朝のお勤めをするために梵鐘を突きにいってもその遠吠えによって消し去られてしまいます。これでは人口減少はさらに進んでしまいます。私も早く何処かに行きたいものです。

かつて私は日本で最初に檀家制度の廃止を訴えその実現のために奔走しました。メディアも動き一時期は時の人ともなりました。それは檀信徒に気を遣い自分のしたいことの足枷になっていたからです。檀家からモノを買ったり保険に入ったりもかなりありました。本当に窮屈で不愉快でしかなかったです。そういう人に気を遣うことは私は個人的には大嫌いです。それでどうしても独立がしたくて今のような形態にしました。宗門や宗務所、教区寺院をも敵に回して戦い抜きました。二重の堀を埋める作業は壮絶でした。その戦いに勝利した結果、今は悠々自適な生活となりました。優越感に浸り堂々とした態度でいつもどんなもんじゃいとドヤ顔でもいられます。こうして革命に成功すれば人生は薔薇色となります。ただそれができる人はほぼいないはずです。私に続けと後追いする人は残念ながら出なかったです。私一人がヒーローとなりました。誰にも意見される立場にももうありません。両親も私には申し訳なかったと思っているに違いありません。そして私の成功には師父は驚愕していると思います。それでも私がしたいことはまだまだ道半ばです。まだ10分の1,いや100分の1しかできておりません。私にとっては本番はこれからです。自分の本当の実力でもって夢を切り拓きつくっていく所存です。両親からの負の遺産を払拭はできました。整理をして次は自分の本来の人生を開眼します。そして世襲とは関係のないところで勝負をしてみたいと思います。これを残された人生でやってのけてあの世に行きたいものです。それをお土産に両親に手渡したいものです。深まりゆく秋の気配の中で思索に耽り構想を練る日々です。まだまだ本当の自分の人生はこれからです。これまでは助走です。準備期間です。ウォーミングアップをしたところです。人生100年時代のモデルケースをつくります。充分に気力体力は温存してあります。これからの40年も駆け抜けていきます。新卒の気持ちで一からやり直します。ご機嫌よう。

令和7年10月13日

見性院住職

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