チベット仏教考
チベット仏教は七世紀頃にインドからチベットに伝播された仏教とされております。その成り立ちは土着信仰との融合により発展した大乗仏教の一派です。緻密な論理学、哲学をもとに展開しており瞑想や呪術的儀礼をも内包しております。密教(金剛乗)をその中核として輪廻転生思想(化身ラマ制度)を承継しております。ダライ・ラマなどの高僧がいることで世界に広く知られております。戒律が基本であり出家主義や哲学による利他行を重視した大乗仏教であります。その上に崇高な修行とさとりを目指す密教が内在されております。特にダライ・ラマのような最高位にあるものは化身とされており、仏の慈悲による菩薩の生まれ変わりとなっております。そのために亡くなると後継者は厳選されて探し出されます。
チベットでは曼荼羅による修行、五体投地という礼拝、マニ車を回転させる信仰などは日常的に行われております。チベット仏教には主要宗派として五つあると言われております。ゲルク派はダライ・ラマ14世が所属する最有力派と目されております。戒律重視と学問仏教が特徴です。ニンマ派はチベット仏教の最古の宗派とされております(古訳派)。カギュ派は口伝による教義を実践する宗派とされております。サキャ派は独自思想による教義を展開して政治的影響力もあった宗派とされております。ジョナン派は他派とは一線を画した独特の思想(他空説)をもつ宗派です。日本でもチベット仏教普及協会ポタラ・カレッジという非営利団体が存在しております。ダライ・ラマ法王直系の正統派チベット仏教団体とされております。チベット仏教の指導者は通常は血縁による世襲制はなく転生ラマ(化身ラマ)制度によって選出をされます。前世の高僧の遺品などを手掛かりにしてその由来を探し当て厳格に選ばれるとされております。ただし珍しいものではサキャ派やカギュ派の一部では血縁関係から半世襲制が取られていた時期もあったそうです。またニンマ派などで見られたものとしては在家僧侶(結婚をして家庭を持つ僧侶)もいてその比率も高く血筋による継承も存在しているようです。教義や寺院管理がそのまま肉親の中で継承されている例もあるようです。ただそうした中では仄聞するところ一度は実社会で経験を積み広く見聞を得て来るそうです。還俗したカタチで社会人経験をし能力が高いことを認められたものが再び僧侶となって高位を継承するところもあるようです。血縁や世襲を重んじている宗派がチベット仏教の中にも存在していることはとても興味深いことです。近年ではそこに目をつけた真言密教系大学の研究者たちが今、衰退に追い込まれている日本の世襲仏教を再生させるためのヒントが隠されているのではないかと現地調査も含めて研究課題にしているようです。今回は当院にもチベット仏教で世襲による法王継承を是としている宗派の高僧も来山されるとのことです。機会があればそこを深掘りして懇談をさせていただけましたら幸いです。是非とも楽しみにその大法会をお待ちください。合掌
令和8年7月3日
見性院 橋本英樹拝


