見性院 熊谷【葬儀、墓地、など仏事・供養に関わる全ての業務を一元化した寺院】

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所在地

 曹洞宗万吉山
 見性院
 〒360-0161
 埼玉県熊谷市万吉797
 ⇒地図はこちら
 Tel 048-536-1785
 Fax 048-536-2010

 


No.07 「専門スタッフを採用し、本堂葬儀を執り行う」

 

 見性院では、「葬儀は葬儀社の斎場ではなく、お寺の本堂で。葬儀社の葬儀社による葬儀社のための

葬儀から、寺院の寺院による遺族のための葬儀へ」と呼びかけ、住職主導の低コストな葬儀を促進して

いる。葬儀費用、香典、生花と、遺族にも参列する側にも高額な費用のかかるものになってしまった葬儀

を、「故人を心を込めて送り出すお葬式」へと転換させたいという考えからだ。当院が本堂葬儀を初めて

早5年。改革はさまざまな困難に直面してきた。しかし、住職の信念は、現在でも変わっていない。


               ※              ※              ※
 

◎住職主導の本堂葬儀、その理想と現実

 住職主導で葬儀を行う利点は、大きく分けて2つある。お檀家との関係改善と、葬儀にかかる費用の

抑制である。現代では肉親が亡くなった際に葬儀の相談をするのは、まず葬儀業者だ。菩提寺がある

場合でも、葬儀業者と葬儀の打ち合わせを行った後で、「お経をお願いします」と寺院に伝える形が多い。

菩提寺の僧侶は1時間程度のお経と法話を行うだけで、檀家とのコミュニケーションは薄くなってしまって

いる。だが、本堂で葬儀を行えば100人以上の参列者が寺院を訪れる。お寺を知って頂く絶好のチャンス

ともいえる。寺院が本堂を提供するだけではなく、葬儀一式を執り行えば、檀家との関係をより一層深める

ことができる。

 

◎現在の運営状況

 見性院の本堂葬儀の施行件数は、月に1,2件程度である。まだまだ多くはないものの、徹底して無駄

を省き、低コストを心がけている。

 本堂葬儀は、檀家以外でも利用できるものの今のところは檀家からの依頼が8~9割を占めている。

将来は、広く利用者を募りながらセレモニーホールと変わらない利用をと考えている。最近は地元檀家

の場合、3件に2件はお寺にすべてをおまかせしたいという方になっており、今後も増え続けると想定して

いる。葬儀に参列する人が少なくなり家族葬が増えて行けば、寺院葬儀は自然に増えていくと考えられる。


 最近は地方から大都市に就職などで生活の場を移した人の場合、さてどこで葬式を行うかという問題も

出て来ている。転勤や転職を度々経験した場合、これは殊更切実となる。今までは職場の人が、葬式に

大多数参列する時代であり、勤務先の土地で、あるいは自宅の近くで葬儀を行うという人も多かったが、

これからは家族・親族のみの葬儀となり、家の墓地があるところでやろうという人が多くなって来る事が

予想される。


 当院で葬祭が行われる本堂は200席用意できる。但し、通常は、50人から150人くらいと想定している。

以前は市役所や警察、病院関係者などの家族が亡くなられた場合、300人から500人程度が集まる

ことは決して珍しいことではなかった。そのため、大多数が収容できるセレモニーホールが活況を呈して

いた時期が続いた。しかしこれからは、このようなことも次第に姿を消し、再びセレモニー葬から寺院葬の

方向へと流れは変わっていくと思われる。


 住職は、普段から檀家とのコミュニケーションに努め、自分の考えを卒直に語り、理解を得られるよう

している。そのために、お盆中は檀家の200軒以上を訪問して仏事の相談などにあたっている。現在は、

その他の檀家はお彼岸中に弟子たちと分担して訪ね歩いている。また、葬儀法事の後席には必ず参加し、

親交を深めている。また日頃から質素倹約に努め、慎しやかな生活を心がけることにしている。坊主丸儲

けと誤解されないよう、その意図を推し量ってもらえるようにするためである。

 

◎設備投資のための準備

 寺院本堂は大概、天井が高く荘厳さを演出するためのつくりとなっている。但し、気密性には乏しく、

室内温度を一定に調節しておくことには必ずしも適してない。当院の本堂の天井は比較的低くエアコンも

設置してあり、鉄筋コンクリートととも相まって温度調節をスムーズにスピーディーに行うことができる。

本堂周囲の窓ガラスはすべて透明で、窓越しには緑豊かな樹木が全体に眼に入り、参列者には開放的

で、清々しい気分を感じさせることができる。本堂の照明器具も自由自在に調節できるようにし、舞台装置

さながらの演出をかもしだしている。内陣須弥壇の側面を囲んでいた幕やカーテンも無くして、広々とした

空間を提供し、式場に一体感を与えている。

 当院は本堂に限らず、全館全室にエアコンを完備し、遺体の安置室も用意している。本堂・客殿は、

全席椅子にしている。客殿には自由に飲めるコーヒー・紅茶・お茶を用意しているので、いつでも気軽に

喉を潤すことができる。最近は下足のまま入れる休憩所を増設して自動販売機を置いている。そこでは

喫煙もでき、葬儀の時には記帳所としても利用できるため、多目的に使え、おかげ様で好評である。

 このような一連の改修は、寺院葬の準備のための一環として取り組んできたものであり、改善点のヒント

はセレモニーホールや葬儀社から学んだものもあった。

 当院は本堂葬儀をはじめ、仏事供養全般を行うにあたって、一般向けに求人広告を出すなどして人材

を確保した。今では住職寺族のほかに寺務職員2名、弟子2名、従事の僧侶3名、その他ボランティア

スタッフなど多くの支援者によって成り立っている。スタッフの職歴もさまざまで専門性を合わせもった

有為な人材にも恵まれている。それぞれが適材適所で活躍し、営業、広報、HPやブログで情報発進して

いる。住職一人ができることには、かなりの限界があり、それぞれ得意の分野を持った人が刺激し合い

協力していくことで、相乗効果を生み、あらゆる可能性が広がっていく。当院もさまざまな葬儀社をはじめ、

各業者との業務提携をし、持ちつ持たれつの協力関係を築いていこうという経緯がこれまで少なからず

あったことは事実である。しかし、住職と業者の方針がなかなか折り合わず、次第に関係は変化して

行った。今にして思えばこれでよかったと実感している。本当に良心的で洗練された業務を行うには、

人は自分のところで育てることが一番で、所詮借りものは借りものである。


 本堂葬儀を始めて4,5年は内外の整備を続け、ここ1,2年くらいで起動に乗りつつある。何故に業者

とは組まず、スタッフを自前で育成して、仏事以外の勉強を重ね、寺院だけで全業務を低コストで行う

とするのか。住職は全く白紙の中で暗中模索、手探りの中で、もがきながらこれまでやってきた。業界紙

や専門誌も貪り読んできた。このエネルギーたるや一体どこからくるのか。


 住職は35歳で米国から帰国後、再び見性院の副住職に戻った。しかし、副住職としてのお寺からの

給料は10万円程度でとても生活できない。そこで僧侶派遣会社などに登録して葬儀や法事のアルバイト

をして何とか生計を立てていった。その時の苦しい経験が、後の「低コストでの本堂葬儀をしよう」という

発想に結びついていった。当時は、アルバイトということもあって、自分がもらえるのはお布施の3分の1

程度のこともしばしば。そこから交通費や食費、宿泊代など消えていくと、手元に残るものはわずかと

なる。当初は高額なお布施も、人の手をへるごとに減少してしまう。このような仕組みを徹底的に勉強して

利益配分を分析した。その時の辛い思いが、寺院ですべてをまかなう葬儀につながった。これまで葬儀社

が請け負っていた役割を寺院が果たす事で、高額のイメージのあるお布施の額もかなり抑えられる。

当院では、すでに葬儀費用からお布施の目安まですべて公開している。更には人的ネットワークにも

注力した。住職の考えを理解してくれる業者や協力者を得ていくことにもかなりの時間がかかった。仏門

の中でのしきたりや習慣と違い、事業のための雇用、経営は住職にとって新しい分野の開拓であり、

試行錯誤の中で信用のおける業者を選択していくことには少なからず苦労があった。

 本堂葬儀を中心とした業務展開をしていくためには、住職自身が専門外の勉強をしていかないと

いけない。自ら陣頭指揮をとって何でもこなし、それぞれに的確な指示をしていかないとならない。

しかし、事業を通じて、異業種の勉強をすることは世の中を知ることであり、世間知らずになりがちな

仏教界にあっては、今後は、非常に大事な要素になってくると思われる。なぜなら、一般の人よりもはるか

に教養があり、世の中を熟知し、事業の苦労をしていないものがそうたやすく説法なんてできるわけが

ない。住職にとってもこれからは経済や経営、マーケティングの知識は必要になってくるはずである。

 

◎本堂葬儀他、業務化への抵抗

 本堂葬儀を始めようとした際には、さまざまな人たちから反対を受けた。亡父で先代住職は、当初「住職

というのは、お経と法話だけをやるべき」という考えの持ち主で、なかなか理解してもらえなかった。ただ、

亡くなる直前の本堂葬儀を後部座席で見守った父は、息子に「これだけのことができるのはお前しか

いないだろうな」と絶賛してくれた。寺族も当初は心配で消極的だった。檀家の中にも住職の方針に首を

かしげる人々がいた。当院の檀家には農業に関わる人々も多く、そうした縁故で葬儀業者を依頼する

場合が多い。そのために、寺院で葬祭業務を仕切ることへの抵抗もある。

 ほとんどすべての葬儀社は本堂葬儀に消極的ではあるものの、本堂で葬儀を行うこと自体は、どの

葬儀社であっても、たいがいは受け入れてくれる。また、寺院主導で本堂葬儀を行い、葬儀社と業務

提携をして委託するという方法もある。しかし、結局それでは意味がない。

 今後は、寄付の廃止と年会費の無料化である。その先にあるものとは、檀家制度をいったん打ち切り、

信徒制への移行である。これにより真の開かれた寺として、独立採算を目指すことになる。

 

◎葬儀以外の新たな取り組み

 当院では、葬儀全般をこなせるのであれば他の業務もやってできなくはないということで、仏壇・墓石の

販売も始めた。檀家以外の方からの依頼もある。 また、永代供養墓、ペット墓地納骨堂、こども水子

地蔵の建立もこの2、3年で完成し、一定の利用がある。これらも住職自ら設計したもので、通常よりは

格段に費用を抑えることができた。こうした取り組みが、内外で評価されて雑誌の取材を受けることが

多くなり、今もある仏教雑誌から原稿の依頼をいただいている。そのために、全国の寺院からも徐々に

称賛の声をいただいており、グループを結成する方向になりつつある。

 しかし、その挑戦はまだまだある。霊園式寺院墓地と新寺建立である。その寺院の次代を担う若い僧侶

と、リタイアした仏教界の改革に熱意を持つ定年僧侶たちで運営してみたい。定年僧侶の長年の経験と

知識を実務に生かし、若い僧侶にそれを伝えていく仕組みをつくることが狙い。それが、10数年後の

計画であり、希望でもある。また、旧庫院をリフォームしての古民家そば屋や喫茶店も検討中。その後の

10年で総仕上げとしての寺子屋道場建設がある。そこはグループホーム、レストラン、図書室、塾など

を考えている。例えば、そこから総理大臣やノーベル賞クラスの人を打ち出していけるような私塾である。

地域の一大コミュニティーセンターとして、そこから有為な人材が育ち、都会に通学や仕事で生活を

移したとしても、また老後に地元・故郷へと帰ることができるような環境をつくる。寺院を中心にその土地

で人が育ち、老後を迎えることが出来る仕組みにし、地域の寺院の存在をより前進させたい。

 

※この文章は月刊「仏事」2010年11月号に掲載された内容を元に加筆・修正したものである



 

 

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